注目の施設
「水素サウナ」日本初公開！トヨタ×HARVIA共同開発の環境負荷のない革新的なととのいが「Japan Mobility Show 2025」に登場
作成日： / 更新日：
2025年10月30日から11月9日まで開催された「Japan Mobility Show 2025」で、トヨタとHARVIAがフィンランド・ユヴァスキュラで共同開発した世界初の”水素サウナ”が日本初公開された。
モビリティーショーの展示ブース「H2 LÖYLY LAB -Future Sauna Mobility-」をサウナクリエイティブ集団TTNEがプロデュースし、未来のサウナ体験を日本で初めて提示し、メディアでも話題を呼んだ。
燃料は水素だ。水素が燃えると水が生まれる。この単純な化学反応が、サウナの常識を塗り替える革新をもたらす。燃えるたびに微細な水蒸気が立ちのぼり、サウナ室が温められながら自然に潤っていく。熱と湿度が同時に生まれる構造は、これまでのサウナとはまったく異なる。
サウナの常識を変える未来のサウナをご紹介しよう。
Contents
近未来すぎるサウナ体験。モビリティーショーで唯一のサウナブース
サウナの取材にも関わらず会場はモビリティーショー。未来のクルマたちを脇目に向かった先には、可動式サウナが設置されていた。日本にサウナを一気に広げたHARVIAのサウナ室に車輪がついている。なるほど、確かにこれも未来のクルマと言えるかもしれない。モビリティなのは間違いない。
しかし、日本でも可動式サウナはここ数年で増え続けているし、珍しいものでもなくなってきた。今回の目新しい点は燃料だ。水素という革新的なエネルギー源を使用したサウナを体験するにも、サ法だけは変わらない。モビリティーショーのシャワーブースで、体を清め、水着に着替える。
モビリティーショーにシャワーブースがあるのがそもそも不思議だが、一般的に不可解なこの流れは、同じくTTNEがプロデュースした「万博サウナ」の会場に近い。初めてというのはいつも不安とワクワクが同居するものだ。
展示エリア「Tokyo Future Tour 2035」のテーマは「現実の未来」。SFではなく、今この瞬間につながる10年後のリアルである。水素燃料のサウナは、まさにその象徴。先に取材・体験をした記者でありサウナーは実際にととのった表情で会場を後にしていた。未来にしかなかった構想が今、目の前で現実に変わっている。
圧倒的に違う「水素サウナ」の体感
水素サウナの構造は言うまでもないが、水素の燃焼によって生まれるのは水のみ。一酸化炭素も排出せず、サウナ室にあるCO2はサウナーの呼吸から出るものだけだ。つまり環境負荷を大幅に減少させたサウナの構造といえる。
サウナ室に入った瞬間の体感を言語化するならば、「爽やか」「軽やか」「心地いい」、そんなワードばかりが出てくる。呼吸がしやすく、想定していたサウナで感じる熱圧などの重みがない。ここまで爽やかなサウナ室は最近でも記憶にない。熱感が圧倒的に軽いのだ。
「優しめ、マイルドなスチーム系か…」
そう早合点して、最初の30秒程度は話半分で説明を受けていた。しかし、1分もしない間に汗が滲み始めた。
よく見ると室温計の針は98〜100度付近を指している。正直、故障しているのではと、疑っていたが、体は正直だ。みるみる表皮に球状の汗が生まれては流れを繰り返している。体感や呼吸の軽さをキープしたまま、体温はしっかりと上がっていく感覚がある。本当に爽やかな高温サウナだ。
ストーブに近づいても、直接的な熱圧もほとんどない。電気ストーブや薪ストーブの普段通っているサウナ室では、ストーブ周辺は特に肌に直接感じる“熱のパンチ”があるし、熱源の真っ赤なエレメントを見て電磁波の心配が頭をよぎったりする不安も同時にある。
しかし、ここで燃える炎は水素燃料だ。軽いのはよくよく考えれば当たり前だが、1回目の体験では、サウナの常識のせいで頭と体の不思議なミスマッチに慣れなかった。ただ、気持ちよさだけはしっかり理解できる。あまりの心地のよさに、初回だけで15分近く長居してしまった。
2回目で気づいた。水素燃焼を繰り返す炎も美しい。揺らぎが穏やかで、黒味が薄い綺麗な朱色だ。燃えるたびに水が生まれ、熱がやさしく、空気が澄む。これまで話してきた体感は、「WET(潤い)、MILD(やさしさ)、CLEAN(清らかさ)」、この3つの表現に集約されるだろう。また、この3つが同時に成立するサウナはそもそも他にはない。
ロウリュいらずで曇らない。SNS・動画時代にもフィットする新サウナ
サウナの気持ちよさを左右する重要な要素の一つが湿度だ。水素サウナでは、燃えるたびにできる水で、ロウリュをしなくても水蒸気がサウナ室を包んでくれる。高湿度の空間を常に維持してくれるのだ。
ここで不思議なことが2つある。１つは、いわゆるスチームが見えない。生成され、燃焼と同時に空気に舞った水が具体的にどこに浮遊しているかがわからない。ただ、ドライサウナのうような体感は一切ないから、高湿度なのはよくわかる。なんせ呼吸がしやすく汗をかきやすいからだ。また体感だけでなく、今回ガイドをしてくれたTTNEの滝本氏からも高湿度であることは測定済みだという。
「やっぱりそうだよな、高湿度だな」。自身の肌も、湿度のサウナリトマス紙に近づいてきたと、自信を深めながら撮影をすると、そういえば全然カメラが曇らない。これがもう１つだ。猛烈に撮影がしやすいのだ。
理由は明確で、水素の燃焼生成物が純粋な水だけだから。CO2・すす・油分も出ないため、曇ったり蒸気を白く見せる結露のもとになる粒が空気中にほとんど存在しないのだ。その結果、まるで霧の中にいるような湿度を纏う体感で、視界だけは澄みきっているという不思議な環境が生まれている。
入った瞬間に感じた空気の質の違いは、水素サウナならではの環境が体感に作用していたからだと、改めてカメラを通して実感した。
これまで何度、サウナ室の換気をしてレンズを拭いたことか。水素燃焼から生まれる”見えない霧”のように、取材でかかる撮影の負荷も蒸発していく気がして、未来のサウナ取材をもっと好きになれそうだ。
セッティングはこれだけ”8.5kgのポータブル水素カートリッジ“
印象的だったのは、モビリティ性だ。モビリティショーに水素サウナがあった理由は、可動式のサウナ室だけではなく、水素燃料となる“サウナの素”を簡単に持ち運べる点にあった。
8.5kgのポータブル水素カートリッジは、女性でも持ち運べる重さだ。電源も煙突も不要。サウナを始める方法は、カートリッジを所定の箇所に差し込むだけ。少しだけやり方を体験させてもらったが、この作業中に、久しぶりにマジンガーゼットのパイルダーオンを思い出した。
自分の好きな場所へカートリッジを持ち運び、セットさえ揃えばサウナが立ち上がる。
まるで自分が所有するメカや、それこそロボットのように、サウナを自由に動かせる未来がイメージできて、実はかなりワクワクしていた。
これさえあれば、大袈裟ではなく山でも、水上でも、どこでも”サウナが動く”。これまでのセッティングでは、設置ができないのが常識だった場所にサウナを連れていけるのだ。HARVIAとトヨタが描いた「どこでもサウナが楽しめる世界」には、ワクワクと愛が詰まっている。サウナをカジュアルにできれば、シームレスにウェルネスが手に入るのだ。未来が良くならないわけがない。
行きたい場所に、自分のサウナを連れていく。「マジンゴー」と叫びたくなる気持ちを抑えて、2セット目のサウナへ。
TTNEがプロデュース：サウナクリエイティブ集団の新たな挑戦
最後に、展示ブース「H2 LÖYLY LAB -Future Sauna Mobility-」の空間プロデュースを手掛けたのは、サウナクリエイティブ集団TTNEだ。ととのえ親方こと松尾大氏と、サウナ師匠こと秋山大輔氏らが率いるTTNEは、これまで数々の革新的なサウナ施設を生み出してきた。
今回は、万博サウナ「太陽のつぼみ」に続き、秋山大輔氏がサウナプロデューサーとしてトヨタとHARVIAと水素サウナを手掛けた。TTNEと世界的企業とのコラボレーションにより、未来のサウナ体験を文字通り具現化したのだ。
ハード面での技術的な革新性だけではない。美しさや動線に至るまで、体験としての価値を最大化する空間デザインや、AI時代に生きる人間に最も価値があるといえる“体感”にアプローチするソフト面でのコーディネートまで行う。設備としてのサウナだけではなく、体験やイベントとしてのエンタメ、さらには日常の快感にも落とし込めるのがTTNEならではの自由自在なサウナのプロデュースである。今回の体験で改めてそう痛感した。
水素サウナ「H2 LÖYLY LAB -Future Sauna Mobility-」
| イベント名 | Japan Mobility Show 2025 |
|---|---|
| 開催期間 | 2025年10月30日〜11月9日 |
| 展示ブース名 | H2 LÖYLY LAB -Future Sauna Mobility- |
| 展示エリア | Tokyo Future Tour 2035（テーマ：現実の未来） |
| 共同開発 | トヨタ × HARVIA（フィンランド・ユヴァスキュラ） |
| 空間プロデュース | サウナクリエイティブ集団 TTNE |
| 公開 | 日本初公開 |
水素サウナの革新的特徴
環境性能
- CO2排出ゼロ
- 煙ゼロ、ニオイゼロ
- すすや油分の発生なし
- 環境負荷ゼロの究極のクリーンエネルギー
サウナ体験の特徴
- WET（潤い）：燃焼で自然に水蒸気が発生、ロウリュ不要
- MILD（やさしさ）：マイルドで柔らかい熱の輪郭
- CLEAN（清らかさ）：曇らない、澄んだ空気
- 呼吸がしやすい爽やかな空気質
- 100度近い室温でも直接的な熱圧がない
モビリティ性能
- ポータブル水素カートリッジ：わずか8.5kg
- 電源不要、煙突不要
- 山でも水上でも設置可能
- 車輪付きで移動可能な可動式サウナ
技術的特徴
- 水素燃焼により純粋な水のみを生成
- 結露の原因となる粒子が空気中にほぼ存在しない
- カメラ、スマホ、眼鏡が曇らない革新的環境
- HARVIA製サウナストーブの信頼性
水素サウナ｜サウナに行く時代の終焉とサウナを持ち運ぶ時代の誕生
トヨタとHARVIA、TTNEによって日本に初上陸した水素サウナは、Japan Mobility Show 2025によって未来の新たなサウナ体験を知らしめた。水素燃焼により生まれる純粋な水蒸気、曇らない空気、CO2ゼロという革新的な特徴は、サウナの常識を塗り替えたといえる。
ポータブル水素カートリッジで、電源も煙突も不要という究極のモビリティ性は、「どこでもサウナが楽しめる世界」を現実のものとする。これまで「設置できない」とされてきた場所に愛するサウナを愛犬のように連れていける可能性が、確実に形になりつつある。
WET(潤い)、MILD(やさしさ)、CLEAN(清らかさ)。この3つが同時に成り立つサウナは世界でも珍しく、それは、暮らしと共にサウナを愛し、自然を愛してきた人間の技術の結晶といっても過言ではない。古からある人と火の関係を優しく組み替えていくような、温かい試みでもある。
サウナクリエイティブ集団TTNEのプロデュースは、かっこいい・ファッショナブル・ハイエンド、そんなイメージを持っているサウナーも多いとは思うが、暮らしを着実にウェルネスにしていく、技術的革新性と体験価値までしっかりと見つめているのだ。
「ここで、サウナしようか?」——サウナに行かず、サウナがある時代は、もうそこまできている。
無料会員登録
